7オンスの庭

文化あふるる言の葉の庭

万物萌ゆ

 

 

 

 

天にては 星々の如く また地には 春に万物 萌えたるが如く

 

 

私は実は門外の者なのだが、日蓮という方は、その著作を少し読めばわかるように、世間で抱かれている印象とはまったく対照的に、本当に惚れ惚れするぐらいに幻想的でロマンに満ちた表現をされる。神秘的な精神世界を誰にも真似できない見事な筆致で描き上げておられる。宮沢賢治が惚れ込むのも、当然の帰結だと思う。少し長いが、かの詩聖の著作の一節を引用する。

 

 

東西南北・八方・並びに三千大千世界の外・四百万億那由佗の国土に十方の諸仏ぞくぞくと充満せさせ給う、天には星の如く・地には稲麻のやうに並居させ給ひ、法華経の行者を守護せさせ給ふ事、譬えば大王の太子を諸の臣下の守護するが如し、但四天王・一類のまほり給はん事の・かたじけなく候に、一切の四天王・一切の星宿・一切の日月・帝釈・梵天等の守護せさせ給うに足るべき事なり、其の上・一切の二乗・一切の菩薩・兜率内院の弥勒菩薩・迦羅陀山の地蔵・補陀落山の観世音・清凉山の文殊師利菩薩等・各各眷属を具足して法華経の行者を守護せさせ給うに足るべき事に候に・又かたじけなくも釈迦・多宝・十方の諸仏のてづからみづから来り給いて・昼夜十二時に守らせ給はん事のかたじけなさ申す計りなし。

 

上野殿母御前御返事より

 

 

 

聖典『バガヴァッドギーター』で描かれるクリシュナの神性顕現の場面を彷彿とさせる。諸尊の勧請された美しい情景描写が壮大な虚空会曼荼羅世界へと、静謐なる祈りの宇宙へと、私の憧れをいざなう。