7オンスの庭

文化あふるる言の葉の庭

於安御前



 

 

しろがねも こがねもたまも なにせむに まされるたから こにしかめやも

山上憶良

 

 

銀も金も宝玉であっても、何の値打ちがあろうか。どのようなすぐれた宝であっても、子に勝ることなどあろうか。(いや、子に勝る宝などない)

 

 

 

 

美馬(みま)の地の つるぎの里に 子授けの 於安(おやす)御前の 威徳まします

 

 

むかし、美馬の地には楠の巨木があったという。  天正年間に藩主の命によりこの木を伐り出そうとしたが、そのたびに山鳴り、地響き、烈風、稲妻が起こり、中々伐採することが出来なかった。  そこで奉行はこの大楠を熱心に祈念している於安という姫に楠の精霊の説得を依頼する。  於安は大楠の根本で一晩祈り続け、とうとう「伐るべし」とのご宣託をうけたそうな。  かくして無事大楠は伐採されたのだが、その際、楠の精霊が於安の体内に入りその子を宿した。 しかし不幸にも於安は出産の際、難産で亡くなってしまう。  その際に「願わくは今より後の人々に安産のご利益を垂れ給え」と言い残したという。  何を隠そう於安は地蔵菩薩の再来だったのである。 その後、於安は「於安御前」と呼ばれ安産、子授けの神として人々に信仰されるようになった。

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敬神家の姫君が、実は持地菩薩の化身だったというフォークロア。やがて霊験を示し安産信仰へと結実していった。人は何のために生まれてきて、何のために死んでいくのだろうか。つまらないことに時間を費やして年齢を重ねてきた。胸に手を充てれば、私も、また、誰もが、何かの化身だというのに。

 

 

 

 

本日の一曲は、ceroでOrphans。 大洪水でみなしごとなった姉弟が、別の世界に転生して、普通の高校生として暮らしているという筋書きらしい。四国を旅して回った時によく聴いていたので今回選曲した。

 

 

大洪水といえば、美馬には「アースシップ美馬」という施設がある。これはオフグリッド、つまり公共インフラに依存しないことを想定した未来志向の家のモデルである。まだ訪れたことがないので、いつか見学してみたい。