わが恋を 人知るらめや しきたへの 枕のみこそ 知らば知るらめ
私の恋する気持ちをあの方は知っているでしょうか。いえいえ、知らないでしょう。私の枕だけが、知っているとしたら知っているでしょうね。
「敷き妙」とは、寝床に敷いて寝る布のこと。「枕」をいざなう枕詞。春眠暁を覚えず。この時期は枕こそ離れがたい恋人。
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敷き妙の 春の枕に 悟りしは この世の他に 楽土はなしと
この世の他に浄土なく、この世こそ唯一の浄土。西の極楽も、南の補陀落も、東の妙喜国も、天のトゥシタ宝宮も、みな麗しい楽園なれども、往ったのちには還る定め。結局はこの現実世界こそが、命が萌え輝く「通一佛土」。私たちは通常、目が曇っていてそれが見えないけれど、本来はこの身はいつだって浄土にあるし、どこに行こうともそこが花の浄土となる。
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日は昇る 世の暗闇を 取り除き 人の心を 照らし出すため
菩薩も同じこと。 不浄の仏土に生じても、衆生を導く為にであって、愚癡の暗闇と交じり合う為にではない。 ただ衆生の煩悩の闇を照らし滅するためにのみ生じるのだ。
『維摩詰所説経』見阿閦仏品第十二
(「つばめ堂通信」より)
東方妙喜国から願生したヴィマラ・キールティ。商人の身を取って示現し、在家の生活者として法を説き続けた。シャーリプトラに「なぜ住みやすい東方の浄土を旅立ち、わざわざ穢れの多いこの忍土の国に生まれてきたのか?」と問われて、上記のように返答した。観世音が供養された高級な宝石である瓔珞を、惜しみなく世尊と多宝佛に捧げた故事に通じる。人はこの世の満たされることのない不毛な種類の喜びを貪るために生まれてきたのではない。ひどく散らかった部屋を綺麗に片付けた後のような、庭の手入れをした後の爽快感のような、砂場で遊んで泥だらけになった幼子がシャワーを浴びて本来の清らかな肌を取り戻すような、そんな種類の喜びを求めて生まれてきたのだと思う。
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本日の一曲は、CHONでPerfect Pillow。