チュニジアの文化に乏しい村に、ダファー・ヨーゼフは生まれた。事実、音楽コンサートも映画館も博物館もない村から彼の人生は始まった。家には聖典クルアーンしかなかった。
彼は世界に心を開いた。多くの地を旅した。世界中のさまざまな料理を試した。彼は今では、唯一無二の個性を誇る世界的なアーティストとなっている。
日本の海を知らない奈良に、東 真七水は生まれた。25歳のとき、旅先の沖縄でダイビングを体験し、美しい海に魅了された。同時に、環境問題の深刻さを体で感じた。そして、心身に不調をきたすほどに悩むようになった。
彼女は決断した。大手企業でのキャリアを捨て、恐らく日本で初となる水中ゴミ拾い専門のダイビングショップを起業。賛同する人々も現れ出した。「一人の百歩より、百人の一歩」と彼女は語る。
芸術のない環境から音楽の華を咲かせる人がいる。海のない地域に生まれて海に人生をかける人がいる。人は生まれでは無い。育った環境でも無い。縁に触れて、自分の使命を見つけることができた時、命が湧き上がってくる。人生が楽しくなってくる。そういう人々が織りなす群像劇のワンシーンを、私も彩ってみたいと願っている。
そのためにも、心の湖面をいつもトランキルな状態にしておこう。何かが映り込んだ時、その魅力を正しく察智することができるように。