カッチーニ アヴェ・マリア 宮田大
西を拝み 東を乞うても 追い払われ のけものの吾 拾う娑婆かな
諸の善業を離れて専ら悪業を行ふ。かくのごときの衆生は諸仏世界の容受せざる所なり。
『悲華経』より
即ち十方浄土の擯出(ひんすい)の衆生を集めて我当に之を度すべし
『悲華経』に登場する宝海梵志(世尊の過去生)が立てた五百大願の一つ
擯出とは、戒律を犯した修行者を追放して他と共住させない、いわゆる排斥や追放のこと。
弥陀が娑婆を捨てて西方に清らかな極楽浄土を建立したとき、ただ世尊お一人がこの苦しみの世界に残り、どの浄土にもとても受け入れられないような汚れ濁った救い難い「精神的難民」と最後まで付き合うことを誓われた、と『悲華経』は語る。「摂取不捨」の理想を現実世界に打ち立てようとする迫力。あらゆる仏に見捨てられた衆生に最後まで付き合い切るとの熱い誓い。このシーンにこそ、「大乗」という精神的運動の心髄を見る思いがする。まるでスクール☆ウォーズ のような胸熱感。落ちこぼれの胸中にこそ、宝珠が輝く。歴史がそれを証明してきたし、そう信じるほうがロマンがある。
聖書にもこう記されている、
「家を建てる者の捨てた石、 これが隅の親石となった」と。捨てられた石にこそ、家を支え切る底力がある。
