山川の 末に流るる 橡穀(とちがら)も 身を捨ててこそ 浮かぶ瀬もあれ
光勝
トチは実が弾け落ちて殻になり、軽くなったからこそ川底に沈まず流れている。人もまた同じ。我を捨て余計な重荷を降ろせばきっと浮き上がることもできよう。
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」とは? ことわざの使い方や類語を解説 | Oggi.jp
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彼は確かに欲張りに違いなかったが、たいへんよい道楽を一つ持っていた。つまり、自分の周囲に貧乏人が多かったので、その人達を助けるのを何よりの楽しみとしていたのである。…木曾御岳の大僧正といわれる一心霊神が彼の夢枕に立ち、こう言った。 「喜三郎、お前は実にあぶない仕事をしているが、お前のやっている道楽はたいへんよろしい。よってわしが助けてやる。お前は欲張って一身代つくろうとして全て無くしてしまったが、それも貧しい者を助けたいという心から出たことであるから大目に見てやる」
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「困っている人がいたら身をなげうってでも助けろというのは じっちゃんの教えです」「それで死ぬなら本望だって」
『天堂家物語』第一話より