7オンスの庭

文化あふるる言の葉の庭

ねむりうた / すずむしとせみ



 

 

寝た者から 順に明日を 配るから 各自わくわく しておくように  

佐伯紺

 

あの、この、「わくわく」っていうのもいいですよね。「わくわくしておくように」っていわれたら、それはもう「いいもの」に決まっているじゃないですか。これは、うれしいですよ。だって、たとえば仕事おわって帰るとき、やぎもとくん明日はわくわくしておくように、ってふっと肩に手をかけられたら、それこそ帰り道スキップしながら、ミュージカルのように歌いながら帰るじゃないですか。

【感想】寝た者から順に明日を配るから各自わくわくしておくように 佐伯紺 - あとがき全集

 

贈り物(プレゼント)として受け取る明日はどれほど魅惑的だろう。入眠前に口ずさみたい、可愛い一首。

 

 

鈴虫と 蝉が同時に 鳴く夕暮れ 何もなかった 夏が過ぎゆく

 

 

森の蝉が鳴き終わる前に、田畑の鈴虫がもう鳴き出している。今年の夏も、特に夏っぽいことがらは何も起こらなかったな。嵐の前の焦げたような夕焼けを仰ぎ、しばし放心する。…こういう時間って貴重だなと思う。青春時代はよくこうやって夕焼けをひとりで眺めてたな。あれは贅沢な時間の使い方なのだったと大人になってから思い知る。でも欲を言えば、あの橙色の透き通った美しさを、照らされる街の輝きを、あの快い静寂を、一緒に堪能してくれる妹が欲しかった。それは無理な相談だから、私は今日も賢治を読む。

 

 

本日の一曲はクラムボンft.MOROHAでScene 3。

 

 

triology(初回限定盤)